2010年06月07日

鳩山氏とは異質の湿った軽さ パフォーマンスの菅(産経新聞)

 昭和55年6月、33歳で衆院に初当選した菅直人新首相は胸中に、30年かけて天下を取るという「30年計画」を温めていた。まさに30年後に夢を実現した形だが、前途は多難で待っているのはイバラの道だ。何より、鳩山由紀夫首相が破壊した「首相の言葉への信頼」を取り戻さなければならない。鳩山首相とタイプは異なるものの、どこか似通った「軽さ」の漂う菅氏は、どんな首相となるのだろうか。(阿比留瑠比)

 ■強い上昇志向

 鳩山首相の実弟、鳩山邦夫元総務相は2日、都内での講演で平成8年の旧民主党結党時に、菅氏が加わった経緯を振り返った。

 「兄と私とで民主党の骨格を作ろうとしていた。後で菅さんが来て『オレが代表をやるのでなければ嫌だ』というので、兄と共同代表になった」

 菅氏と親しく接した人物は、その「上昇志向」「権力志向」に強い印象を受ける。実際、これまで8回の党代表選で、「形勢に利がなく動けなかった」(側近議員)という昨年5月を除き、7回出馬している。

 今回、鳩山首相が「政治とカネ」の問題で評判の悪かった小沢一郎幹事長を道連れに辞任したことで、有権者の民主党への目線は和らいでいる。とはいえ、参院選の厳しい情勢が劇的に改善されたわけではない。

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)移設問題は、沖縄県民の理解を得られるあてはなく、依然解決のめどは立っていない。昨年の衆院選のマニフェスト(政権公約)を実行するための財源も確保にはほど遠い。

 八方ふさがりにも見える状況で、あえて火中のクリを拾った菅氏に勝算はあったのか。条件は不利でも、首相になるチャンスを逃したくなかったのか。

 鳩山首相は普天間問題で「最低でも県外」「5月末までに決着」と成算もなくぶち上げ、これが「オウンゴール」(野田佳彦財務副大臣)となり自滅した。菅氏はこの問題について「(かかわりを)もっていない」と避けてきたがどうするつもりか。

 鳩山首相の場合、「秘書の罪は国会議員の罪」などと断じた過去の発言がブーメランとなって自身を傷つけた。だが、ブーメランといえば菅氏こそ“元祖使い手”を名乗る資格がある。

 平成16年、年金未納問題で自民党側を追及していた菅氏(党代表)は、後に自らの未払いが発覚して代表辞任に追い込まれ、頭を丸めてお遍路姿で四国八十八カ所巡りを行っている。

 ■パフォーマンス好き

 菅氏といえば30年前の初当選時から、その短気さから周囲に「イラ菅」とあだ名されてきたのが有名だ。

 だが、では直情径行型かというとそう単純ではなく、状況次第で右にも左にも合わせる「ポピュリスト(大衆迎合政治家)」としての顔ものぞかせる。

 全共闘世代に誇りを感じていて“体制側”に拒否感を持つ半面、リベラリズムへのこだわりが強い。一方で、党内保守派に勢いがあると見ると、そこへのアピールも欠かさない。18年の代表選演説では、保守系数学者、藤原正彦氏の著書「国家の品格」を長々と引用して、「全く似合わない」(中堅議員)と滑ったこともある。

 8年9月には、旧民主党を結成して厚相を辞任するという菅氏に対し、エイズ薬害訴訟原告団の川田悦子さんが「新しい政党といっても理念もないし、応援できない」と迫った。菅氏はこう答えたという。

 「政党なんて、そんなもんですよ」

 そんな割り切りゆえか、無所属、社会市民連合、社民連と黙っていては埋没してしまう小政党を渡り歩いてきた経歴からか、菅氏はパフォーマンスを好む。

 鳥インフルエンザが発生すると鳥丼、BSE(牛海綿状脳症)が話題になると牛丼、病原性大腸菌「O157」との関連が疑われるとカイワレ大根3パック…。菅氏はカメラの前でひたすら食べてきた。

 民主党幹事長時代の14年1月には、報道陣を引き連れて公共職業安定所を視察し、パソコンによる求人検索を試みた。

 「55歳、月収50万円」…。菅氏の希望月収の高さに、かえって再就職の厳しさが分かっていないと批判が出る始末だった。

 ■不安な皇室・安保認識

 不安を覚えるのが、菅氏が外交・安全保障や歴史認識の問題についてどう対応するかだ。

 菅氏は代表時代の15年1月、那覇市での記者会見で「(米軍)海兵隊の基地と兵員は必ずしも沖縄にいなくても極東の安全は維持できる。国内からの移転を基本的な方向として考えている」と語り、政権を取った場合は海兵隊の撤退を求める持論を示している。

 菅氏は、現在は普天間の県内移設に関する日米合意を踏まえる姿勢を示しているが、持論との整合性をどうとっていくのか。

 拉致事件の拉致実行犯である北朝鮮工作員、辛光洙(シンガンス)元死刑囚らの助命釈放嘆願書に署名した問題もある。菅氏は自身のホームページで「私の不注意。おわびしたい」と謝罪しているが、安倍晋三元首相は4日付のメールマガジンで、「(辛元死刑囚は)総理就任をことほぎ、祝電を打ちたがったに違いありません」と皮肉った。

 皇室観も見えにくい。4日の首相指名にあたって、この日から静養に入るご予定だった天皇陛下の日程はなかなか確定できず、同日中の宮中での任命式も見送られた。

 17年5月には、終戦時に昭和天皇は退位すべきだったとの認識を表明した。

 昨年11月の政府主催の「天皇陛下ご在位20年記念式典」では、式典実行委員会副委員長を務めた。にもかかわらず、陛下ご臨席の場で「首を何度も何度もこっくりこっくりとし、居眠りをしていた」(自民党の木村太郎衆院議員の質問主意書)と指摘されている。

 菅氏には鳩山氏のどこか明るい無重力的な軽躁さとは別の、湿った感じの「軽さ」がうかがえる。それが吉と出るか凶と出るか、今は見守るしかない。

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posted by イシモト トシアキ at 23:53| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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